ミスチルヒストリー 1994年 イノセントワールドはこうやって生まれた
ミスチル5枚目のシングルは、
あまりにも有名なこの曲。
発売から二か月でミリオンセラー。
①.本題の前に・・・
まず、
その話の前に・・・・
皆さんは、普段、アーティストの話をする時に
「さんづけ」ってしますか?
私の周りではないです。
アーティストは、名前そのものがアートでもあるのか?
でも、通称で呼ぶ場合はけっこうあるかもしれない。
「さんづけ」になると、まるで知り合いの話のようになり
むしろ馴れ馴れしくさえ感じる。
でも、知り合いでもなんでもなく
曲というアートを通して
一般大衆として話をする時には
そうなるのが自然かと思う。
考えてみれば、
例えば
歴史に残る偉人でさえも
「福沢諭吉(天は人の上に人を作らずが有名)」とか
「野口英世(伝染病を研究して貢献)」とか
そんな偉い人物でさえも
福沢諭吉さん、とか
野口英世さん、とか
絶対、言わない。
さんづけをし始めると
ビートルズさんとか、
ジョンレノンさんとか・・・・
なんか変な感じになるし、
全員統一した書き方だとますます違和感がある。
というわけで、表記上では、
敬称はつけていないけれど
リスペクトがあるからこそ
さんづけにならないかと思う。
ただ、桜井和寿に関しては、
「桜井さん」というのが、ひとつの通称だと思う。
音楽の話をする時に、普通に「桜井さん」だと思う。
というわけで
桜井さんと、書いていこうと思う。
そして、本題。
②.イノセントブルー
この曲は、スポーツ飲料のCMのタイアップともなっていたので
そのイメージで曲を作らないといけなかったようだ。
前作の「クロスロード」で、
初のミリオンセラーを達成した桜井さんの
曲作りへの意気込みは察する通りだろう。
そこで、ドラマーのJENと何度もすり合わせを重ねて
作られていったというが、
実際は、詩がなかなかできなかったのだという。
音楽をするものとして
これはすごく分かるところで・・・
実は、曲はわりと作りやすい。
コードはコピーしてもいいので
コードを適当に並べてたら
いつの間にかできたりする。
でも詩はもっと直接的な表現になるので
本当に訴えたい事を書こうとすると
恥ずかしさも加わるし、
周りの反応を考えると
言葉ひとつ選ぶのに悩むのだ・・・
ましてやCMのタイアップ曲ともなれば
イメージは大事である。
このイノセントワールドも御多分にもれず
詩に苦労したのだという。
あれこれ苦労していた時に
桜井さんはふと
「少しだけ疲れたな」
と率直に言葉を書いてみたところ
そこから歌詞ができていった。
実は、「イノセントブルー」というのが
当初の仮タイトルだった。
③.CMタイアップという縛りから自由に・・・
暗中模索の中、
「少し疲れたな」をきっかけに
歌詞が湧き出てきたというのは、
小林武史氏の言葉に救われてのことだった。
CMのイメージに合わせて
詩を書いて苦労を重ねていた時・・・
小林氏の助言は素晴らしかった。
タイアップの曲かもしれないけれど
それよりもボーカリストとしての
個人の思いを書いた方がいいと・・・
大衆的な曲を作ろうとするほど
気を遣いすぎて
本音は書けない。
本音で書けない詩に共感は得られないと思う。
私たちが、感動するのは
「こういうのは、口に言いにくいけど、やっぱりそうだよね・・・」
そういうモヤっとした混純とした世界を
「これ、あるよね」
と思いながら、
それぞれに立場で共感する部分で
その曲を聴くのではないかなと思うのだ。
そう、
それがイノセントワールドだった。
④.多くの人の内面に入っていくという事
クロスロードでもそうだったが、
実はCMに合わせて秒数が計算されている。
ストップウォッチで測って
ぴったりにしたりという完ぺきさ。
このイノセントワールドも、その計算がされていて
これは、「ミスチル割り」とも呼ばれている。
結局、プロというのは
結論として売れなかったらプロじゃないのだ。
みんなどうやったら売れるかを考えている。
いや、
売れる、という言葉は適切か分からないが、
お金を出してでも欲しいと思うもの
必要とする何かを作るということなのだ。
私たちが自分が必死で働いて得たお金を
出してでもいいから欲しいと思うようなもの、だ。
それだけの価値がないものに
お金なんか出すわけがない。
ただなんとなく売れるというのは、
よくいう一発屋というもので・・・
息が長いバンドというのは
なんとなく、ではなく
何かしらの根拠や自信があるかと思う。
反応がなかった曲は、どうしてなのか
何が悪かったのか・・・・
徹底的に追及して
多くのみんなが求めるものは
なんだろうかと考えるから
そこに大衆性が生まれるはず。
桜井さんは、
特に、印象的なメロディを作るのが秀逸。
有名なところで
サザンオールスターズもそうだが、
音域が非常に広くて
サビでの高音にぐっと掴まれるのだ。
間奏では、
ベースソロフレーズからギターソロにつながる部分がある。
低音からぐっと一気に高音に・・・・
ギターソロオンリーならば、よくあるのだが
無意識に盛り上がるテクニックだなと思った。
歌詞のない部分は
実は大事で・・・・
次にどんな歌詞が待っているのだろうと
間奏を聴きながら想像している。
こうやって
桜井さんの切ない歌詞の
この感情の高ぶりが
自然な形で演奏に仕組まれていて
これが売れないはずない。
第36回日本レコード大賞で大賞を受賞することにもなった。
それと、
改めて聴いてもらえれば分かるのだが、
この歌詞の美しさ。
この洗練された日本語の使い方。
歌詞がいい曲は、
人を動かす。
出す曲、出す曲が、
次々とミリオンセラーになってしまう
「ミスチル現象」が本格的に始まることになる。
そんなイノセントワールド
改めて聴いても、よくできた名曲だと感じるだろう。
ミスチルの曲は、
聴いてるとふと涙が出そうな時がある。