SHISHAMO J-POP界を揺るがす転調とは・・・
まずは、このビートルズの曲を聴いて頂きたい。
気が付かないかもしれないが
30秒辺りで転調している。
ビートルズは、この「転調」ってやつが
実にうまいのだ。
このパターンは
わりとよくあるのだが
小難しい言葉を使うと
「短3度転調」というもの。
簡単にいえば
音の並びは同じだけど
暗い感じから
急に明るくなるとか・・・・
そういった感覚だ。
では、ここから
SHISHAMOの話に入る。
①.「明日も」異例な転調パターンとは
②.何故、わざわざ転調するのか
③.JPOP界のジミヘン??
④.一つずらす転調パターンの有名曲
⑤.一曲の中で明るい、暗いがある転調の有名曲
⑥.転調の肝はこれだ!!
①.「明日も」異例な転調パターンとは
SHISHAMOの「明日も」は
あまりにも有名になったが
この曲は、サビで転調がなされている。
実は、これが驚きの
転調パターンなのだ。
普通は思いつかないような
遠隔へ移動している。
どういう事かというと・・・
聴いて頂ければわかると思うのだが・・・
サビで完全に流れが変わっている事に
気付くと思う。
②.何故、わざわざ転調するのか?
そもそも、
何故、転調などするのかという話だが・・・
要は、インパクトを与えたいという事だろうが
それは、サビで訴えたい何かがあるからだ!
しかし、
転調などしない方が
演奏する側にしてみれば
全然、楽なのである。
それでも転調させる!!
ある種の挑戦・・・
冒険でもある。
普通は、過去に習って
この冒険をするものだが・・・
SHISHAMOは違った。
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先に
ビートルズを例に
「短三度転調」の話をさせて頂いたが
厳密にいうと、
このパターンは
転調ではないという方もいる。
つまり
単純に言えばだが
ドレミファソラシド・・・・・
これを
ラシドレミファソ・・・・
と、ラから始めただけである。
このやり方は
比較的扱いやすく
ロックやポップスでは
よく使われる。
(いわゆる「平行調」というやつ)
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ちなみに
同じ一つの曲の中で
たとえば
Cメジャー から
Ⅽマイナーに変わるパターン。
これもわりと使う手で
「同主調」ってやつ。
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では、
SHISHAMOはどうしたか・・・
短三度の、そのまた単三度上に飛んだのだ!!!!
え?
聴いてる側は、
この単純にはいかない展開に
裏切られてしまい、ハッとする。
サビで、不思議な高揚感を感じるのは
この転調のせいだと思う。
ところで
転調を仕掛けるに当たって
作曲する上で音楽理論を知る必要がある。
どうしたら
音楽として成り立つのか
定形化された理論を
頼りにする。
しかし、
SHISHAMOの
宮崎朝子は
特に音楽理論を勉強したわけでもなく
勘でこれをやってのけたらしい。
私はこの発想に全く驚かされたしまった。
ただ・・・
彼女の生い立ちを知れば
それも納得できた。
音楽一家であり
いつも自然とジャズやロックが
耳にはいっていたからだ。
理屈よりも、本能や直感が
働いているのだと思う。
音楽をやっているものなら
オリジナル曲は作ってみたくなるものだし
ましてや
サビのインパクトを考えれば
より訴え易い転調を
取り入れたいと思うのだが
彼女のように
思い切った転調は
なかなかできるものではない。
③.JPOP界のジミヘン??
もう少し付け加えると・・・・
JPOPでは
一つ曲の中で
(半音を含めて)
キーが1つ・2つ・3つ・5つと、動くパターンは多いが
4つ・6つ動くのは、大変珍しいと言われる。
特に6つ動くのは・・・
異例だ。
※このキーというのは
カラオケでよくキーを上げ下げする
あれと同じ。
とにかく
この移動の仕方だと
共通するコードがたった一つしかない。
(「明日も」の曲ではC=ドの音のみ)
だから自然に聴こえるのが難しい。
不自然で違和感ある動きをあえて使い
それをインパクトにした。
これが悪魔の転調とか
魔法とか言われる所以である。
#(シャープ)や
♭(フラット)
の数があまり変わらないように
転調させると
自然に聴こえるので
失敗もないが
それどころか
とんでもない遠隔移動である。
音楽理論でよくあるパターン
全く違うことをやってのけた。
まるで
ジミヘンみたいだ。
音楽理論上からの策略ではなく
音感として……
本能的に
こんな音を作ったなんて。
言い過ぎに聴こえるかもしれないが・・・
いや
実は、それくらいJPOP界では
あり得ない転調なのだ。
すごいよ。
SHISHAMO。
しかも、
Bメロからサビに変わる瞬間で
少しずつ
うまいことコードを上げてるから
自然に聴こえるという魔法!
(真似してみたくなってしまった。)
④.一つずらす転調パターンの有名曲
まずは、よくある転調がこれ。
曲が終わりにさしかかる頃に
半音ずらす。
これは本当に多い。
曲のラストで思いが高ぶっている表現として
半音上げる(下げる事もある)というもの。
この方法だと
単調にならず
ラストを終えられる。
わりと真似しやすい。
⑤.一曲の中で明るい、暗いがある転調の有名曲
これもよくある平行調による転調
冒頭のビートルズの曲と同じ方法だ。
転調している事に
気づきにくい
自然な方法である。
これで歌詞の内容による
暗さと明るさの波を
表現できる。
ちょっと古い曲ではあるが・・・
華原朋美「I’m proud」も同じく。
⑥.転調の肝はこれだ!!
究極のところ
転調って何かっていうと
演出でもあると思う。
その演出だが
こんな↓洋楽がある。
転調は
気分を変えるとかいう
イメージではあるが
ここまでくると
より壮大で
とてもドラマチックな感じを
与えるようになる。
突拍子もなく遠隔に転調すると
意表をつかれるのだが・・・
勿論、そこは
狙ってはいるだろう。
しかし問題は
それをしつつ
いかに
わざとらしくなく
変えることができるか!!
そこが大事だ。
これなんか、カッコいい転調だ。
邦楽では・・・
そもそも、JPOPに転調が多用されるきっかけは、
小室進行などというコード進行の固有名詞ができたしまった
あの小室哲哉氏とも言われている。
時代を作った人である。
曲の盛り上がり方が上手かった。
小室氏の転調マジック・・・
彼がまだそれほど注目されていなかった頃に
転調を施し大ヒットしたのが、この曲。↓
彼の後に、転調する曲が増えていった。
そういう意味で
転調のはしりとも言えるのではないだろうか。
古い曲だが・・
渡辺美里「My Revolution 」があげられる。
小室氏のすごかったところは、
意表をつく目的ではなく、
曲の盛り上がりを作る際に
歌い手のキーを考えると
それ以上、音階を上げるのは
しんどい。
無理が出る。
そこで逆に
キーの方を変えていたというから
歌い手への気遣いがあっての転調というところ。
音楽をするに当たって
言い表せない
色々な壁はあっただろうが
日本のJPOPを変えるくらいの
多大な影響力を持っていたのではないだろうか。
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